双葉文庫 千野隆司 著
3巻を飛ばして4巻「麦の滴」となってしまった1巻完結のため、物語としては問題ないだろう。
天明七年。天候不順による東北地方の飢饉の影響で食いつめた無宿人たちが江戸で多く見られるようになっていた。
正紀と共侍の植村仁助は街中で、丸眼鏡を掛けた脇両替商熊井屋の跡取り息子「房太郎」をトラブルから助ける。房太郎は、商売がら銭と物の値段を調べていてトラブルに巻き込まれたらしい。
一方、正紀の友人である北町奉行所属高積み見廻り与力の山野辺蔵之介は、材木商高浜屋で起きた材木倒壊で番頭が大怪我をした事件を調べていた。
正紀の婿入り先は、下総高岡藩一万石の井上家、剣友で親戚の井上正広は、常陸下妻藩一万石の長男で次期藩主。この二家の本家は浜松藩6万石の井上家である。
この本家から、江戸にある井上家の菩提寺の「日蓮宗大覚山浄心寺」本堂改築を正紀・正広に行うよう指示が入る。
改築の監督はもちろん資金調達も二人にかぶさり、両家で二百両以上を調達しなくてはいけない。困った二人は、房太郎から大麦の投資を勧められる。
当時の江戸の経済状況を知ることが出来て勉強になるが、殿様が大麦相場やインサイダー紛いの銀相場に手を出すのは・・どうかと思われる。令和の時代だったら訴えられるのでは?
後半、山野辺蔵之介が調べていた材木倒壊事件と、この改築工事が繋がってきた。正紀は危機を乗り越えられるか。